ふむふむのヒトトキ

【第三回 横尾忠則(前編)】
第三回 横尾忠則(前編)

「かえる、ための路」


 敬愛なる横尾サマ。

好きな装丁の本を古本屋で発見した。
そのデザイナーをざくざく掘り下げると
ピープルツリーの年齢に必ずといっていい程
横尾さんが登場する。

どんな映画も、どんな芝居も
同じ現象に遭遇する。
これはもう、必然なる偶然だとしか云いようがないでしょう?
だから今回、その縁にかこつけて対談をお願いしました。

横尾さんという森の中にごく自然に踏み入れてしまった
あたし、は
迷うことなく光を見る。
それは肉体に正直に描き続けた人の魂なのかもしれない。

実際にお会いして、なんと人間らしい方なのだろう と
強く思った。
人ガタの器にせせこまった現代人とは明らかに違う。
やらかい「気」に包まれていた。

あたしはまだ自分の家を出たばかりで、
目の前に広がるアスファルトづたいに
鼻歌をうたっているだけなのかもしれない。
時折うしろを確認しながら。

いつか『帰る』ことさえも忘れたまま
それでもみえない綱に手繰り寄せられ
きちんと自分について深くかき出せる時が続いていれば
いつか、みんなは
あたしの内に在る森羅万象に光を感じてくれるのだろうか。

一青窈




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