ふむふむのヒトトキ

【第一回 阿久悠(前編)】
第一回 阿久悠(前編)

「等身大という名の虚像」

敬愛なる阿久サマ。

あたくしは阿久さんを随分と前から存知ておるのですが
阿久さんのなかで一青窈を時の過ぎゆくままに
ひとひらの花弁として眺めていただければ、と
今回の対談を申し入れました。

ジレンマが御座います。
一青窈を皆のなかでつくりあげてもらって構わない、と思うと同時に
なんだか悲しい気持ちにもなったりするのです。
ゆえに
阿久さんの描く女性像は日常からビニール一枚ぶんだけ浮いており
その非常識さからゆえにこぼれる侘しさが
あたしのこころを打つのです。

阿久さんが歌謡曲界のなかでなしえた偉業というのは
その世界にビッグバンともいうべき嵐を巻き起こしたことだと思います。
阿久さん自身がかかれている書のなかに
《「女」として描かれている流行歌を「女性」に書き換えたい。》
とありましたが、
あたしなんかはまた女をもどしたいと考えているわけです。
経済力のありすぎる現在の若者を、若しくは自身をも
うつくしく描くのは現実、常識からはなれるべきかしらん
と昼夜思案して居るのです。

昔も今もあまりかわっていないと思うのです。女子高生もお年寄りも。
ただ常識のたががはずれた現実と非現実との狭間で迷っているのです、
あたくし。
だからこそ上村さんの絵にひかれ阿久さんのことばに導かれ
あたし、唄を歌っているのでしょう、
か。



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