りっかい

*紅き魂〜少年達への鎮魂歌〜(28)
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──カンカンカンカンッ!!


町の中心に立てられた、簡易空襲警報器が唸る。

同時に鳴り響く銃声と爆音。けたたましい断末魔。


「もううんざりじゃ...」
「仕方がないでしょう。さあ、もっと詰めて」


今年17になったばかりの少年──仁王雅治は、恋人である柳生比呂士に促され、蒸し暑い防空壕のさらに奥へと身を押し込める。

依然として挽回の兆しを見せない国に、仁王はいらついていた。

(このまま勝機が見えないまま、ひもじい想いをし続けなければならないなんて、そんなの耐えられん!!)

幸い仁王たちが暮らす地域には、まだ学徒出陣の省令が出ていなかった。
このことに対しても、仁王は憤りを感じていた。役に立たない同期たち。自分なら、もっとうまくやるだろうに。




「....くん...仁王くん!」
「...!すまん、ぼーっとしちょった」
「しっかりして下さいよ。警報が解除されたので、家に帰りましょう」
「おん...」



柳生に手を引かれ、自分たち以外誰もいなくなった防空壕を出る。辺りは多少の破損はあるものの、都会より被害は少ない。

幼くして両親を亡くした仁王を、柳生家が引き取っていた。しかし、その柳生の父は戦争の序盤に海兵隊の大佐として出陣し、戦死。
母は父の後を追うように、その命を断った。

いよいよ身寄りのなくなった二人は、残された柳生邸にて二人暮らしていた。


「家、残ってるとええのぅ....」
「ええ、まったくです」



がっちりと繋がれた手は、無事焼けることのなかった柳生邸に着くまで決して離れることはなかった。

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