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朝
目を覚ますと、異常に体がだるかった。
そして、連発する咳。
熱をはかると『３８，６℃』
どうやら、僕は風邪を引いてしまったらしい。
あれがいけなかったのだろう。
――バイオ田中の新発明品『超風邪菌』
事の発端は昨日の放課後。
どんな馬鹿でも絶対に風邪を引く菌を開発したと、バイオ田中が興奮気味にシャウトしながら教室に飛び込んできたと思ったら「喰らえ井ノ原ー！」と、いきなりそれを真人目掛けて放り投げ、しかしそれは勢いつき過ぎたが故に空中で蓋か開いて、本来の標的である真人を逸れ、すぐ近くで真人と筋肉で遊んでいた僕に直撃。
僕は頭から超風邪菌を被ってしまったのだ。
ちなみに、そのバイオ田中は、葉留佳さんの報復攻撃で倒された。
…教室の中を彼に向かって乱れ飛ぶ机や椅子、ビー玉やベーゴマ、爆竹にロケット花火……そして何故か小毬さんのぱんつ(アリクイだった)etc.etc…
アレは酷い有り様だった。
解毒剤(？)を飲まされ一件落着かと思いきや、どうやらそれは失敗してしまったらしい。
いや
もしかすると、もしかしなくても敢えて解毒剤と違うものを渡して発明品の効果を試しているのかもしれない。
だとすれば、僕が解毒剤として渡された薬も新しい発明品だと推測できる。
バイオ田中…恐るべし。
そして、それ以前に何故そのような事をしたのか。
それは、最近、科学部との抗争が激しくなってきたので人体実験が行えるサンプルを探していた。
そう結論付ければ頷ける…って誰がサンプルなのさ！？
…彼にとって、僕は実験用モルモットのようなものなのだろうか。
「今日はデート行く予定だったのに…」
しかも、今日の放課後は、葉留佳さんと駅前に新しくできた喫茶店に行く予定だったのに、この調子では行けそうにない。
バイオ田中、コロス。
逃げてもコロス。叫んでもコロス。助けを呼んでもコロス。
と、まぁ来ヶ谷さん的な思考はお終いにして…
取り敢えず、汗を吸い込んだパジャマが気持ち悪いので着替える事にした。
だが
「うぁ…」
思ったよりも症状が重かったらしい。
お、おのれ、バイオ田中ぁ…
体勢を崩して派手に倒れてしまった。
ズゴッ！！！
そのまま床に置いてあった真人の鉄アレイに額から激突。
そして、目からヒヨコマークを大量に撒き散らしながら僕の意識はブラックアウトした。
目を覚ますと、視界に飛び込んでくるのは二段ベッドの屋根。
大方、真人辺りがここに運んでくれたのだろう。
時計を見ると午前１０時を少し過ぎたくらい。
隣には葉留佳さんが寝ていて、僕が起きたのを確認したのち、とびきりの笑顔で
「あ、おはよ～理樹くん」ときた。
「うん、おはよう葉留佳さん…ってあれ！？ 葉留佳さん、学校は？」
平然と挨拶をしてしまったが、どう考えても葉留佳さんがこの時間に寝ているほうがおかしい。
「ほろんだ」
「幼稚園児でもわかる嘘をつかないで。滅んだのなら真人もここに居る筈でしょ、って僕ツッコミどころがおかしかった…まぁ、サボったんだよね？」
「えっ？ サボってなんかないよ？」
「…じゃあ、どうやってここに来たのさ」
僕ははぁと溜め息をつく。
「昨日のバイオなんちゃら～って人とその部下、それとみおちん率いる科学部部隊が校内で暴れ出して、学校が…」
えっ？
まさか
もしかして
もしかすると？
「…マジで滅んだの？」
「いやいや、そうじゃなくて、ちょ～っとみんながおかしくなっちゃったので…」
「逃げてきた、と？」
「だって～知らない人が襲ってくるし…」
知らない人、改め凡キャラＡコロス。
「相川って人」
相川しね。
いや寧ろ、笹瀬川さんの携帯から僕が声真似して手酷く嫌がらせしてやる。
いや、中の人が同じだとこういうときに便利だよね。
「他のみんなは？」
「こまりんと鈴ちゃんが噛みついてこようとしてきて怖かったデスネ」
あぁ、神よ。
学校はバイオハザ○ドと化したようです。
「んで～理樹くん、何か欲しいものある？」
「えっ？ 学校がバイオハ○ードの話じゃなかったの？」
「はっはっは～。そんなの嘘に決まってるじゃん。や～い、騙された～」
さいですか。
というか嘘なんだ。
笑いながら抱きついてきた葉留佳さんを軽く受け流しておく。
「むー…ほらほら理樹く～ん。不貞腐れたらダメだぞ～、なんちって♪ はい、お水！」
手だけを動かして目覚ましの横から水の入ったコップを葉留佳さんが差し出してくる。
「全く、妙に納得の行くリアルかつ壮大で壮絶な嘘だったね…っと、ありがとう」
水を受け取って飲み干す。
「あれ？ この水なんか甘い」
あと、少し水に無い喉越しもあったし。
「風邪を引いたら甘いものーってお姉ちゃんが言ってたから温かいお湯にハチミツ入れてみたんだけど……ひょっとして美味しくなかった？」
途端に不安そうな顔をする。
今にも泣き出しそうだ。
まったく、葉留佳さんは感情の起伏が激しいなぁ。
ただ、そこがまた彼女の可愛らしいところでもあるのだけれども。
「ありがとう」
そんな彼女を抱きしめ、右手で優しく髪の毛を撫でた。
「大丈夫。美味しかったから…ほらほら、泣かないで」
「ぉんとに…？ ほんとにまずくない？」
「うん。僕は嘘つかないでしょ？」
「…うん」
そう言って、葉留佳さんはより密着してきた。
「ほんとはね…」
「ん？ どうしたの？」
涙声で囁きかけてくる。
「ほんとは、理樹くんが倒れちゃって心配だったんだ。ゆ、ゆすっても…ひっく…何しても起きなかったから…ぐすっ…もしも…もしも理樹くんが死んじゃったりしたらって思ったら怖くなっ…て…ぐすっ…私がいないうちに何かあったらどうしよう…って怖くて…」
「大丈夫、僕は死んだりしないよ。いつだって葉留佳さんの近くに居るから」
背中を優しく叩く。
ちょっとありとあらゆる段階をぶっ飛ばしてはいるけれども、ここまで心配もとい愛されているというのがありがたかった。
本当に僕は幸せ者なんだと思う。
「…ぜったいに？」
「うん、絶対に！約束するから…ね？」
「わかった、絶対にぜったいだよ？」
「大丈夫、絶対に絶対」
デートに行けないのは残念ではあるが、たまにはこういう日があってもいいんじゃないかな。
そう思った。
ただ、バイオ田中は絶対にこの世から、物理的な方法で抹消してやろう。
そう決意した。
「おーい、理樹起きてるか？」
暫くして、恭介達が見舞いに来る。
「あ、恭介さん。いきなりで悪いんだけどファ○チキの買い物に駆り出されてくれませんカネ？」
「おう、わかった！ って、見舞いに来ていきなりパシりかよ!?」
泣きながら、しかし、キッチリとパシりに出ていった我らがリーダー。
「なんなんだ理樹。今きょーすけのヤツが凄い勢いで飛び出していったぞ!? びょーきか？」
「そうデスネ、鈴ちゃん。アレは中２病と言う心の病でして…」
「なにぃ！？ それはもう…どうしようもないのか？」
「どうしようも無いですネ。本人が気づくまで」
「いやいやいや、確かにそれは本人の問題なんだろうけど…これからも普通に接してあげて？」
「うみゅ、理樹がそう言うなら…兄貴として扱ってやる」
いや、鈴。
キミはもうその時点で恭介の事を兄として見ていないんだよ。
「よぅ、理樹。筋肉いるか？」
「いや、遠慮しておくよ」
そもそも、筋肉は取り外し不可能だし
「じゃあ、筋肉さんがこむらがえったしようぜ？」
「それも遠慮しておくよ。」
「うぅ…うおおぉおお！！ 理樹に嫌われたぁぁああ！？」
「それ以前に僕は風邪だし」
「嫌われた、の部分は否定しないんだな…と、これは差し入れだ。」
「あ、謙吾ありがとう」
謙吾から紙袋を受け取り中を覗く。
――そこには
「「「「み、巫女服？」」」」
言葉の通り、巫女服が入っていた。
紅白柄の腋が見えるタイプの物だった。
「しまったぁぁああ…俺としたことが…」
そうか、謙吾。
キミも堕ちるところまで堕ちたんだね？
だってほら、ここに「なおえりき」って刺繍がしてあるもん。
「・・・」
「う、理樹。そんな目で見ないでくれ…はぁはぁ」
ヘンタイは帰れ。
顔も見たくない。
「うわっ！？ コイツきしょっ！ うわぁっ！こっちくるなぁ！」
「へっ…流石謙吾っちだな。なら俺は、コイツだぁぁああ！！！」
真人が学ランの胸ポケットからメイド服を取り出した。
「お前はドラ○もんか！」
鈴ナイスなツッコミだよ。
キミはもう十分に強くなった。
だから、そのツッコミを連れてこの先に進め…ってなにこの文章。
「らんらんるー」
葉留佳さん。
脈絡の無い行動は止めようね？
作者のバイト先バカにしたらダメ。
「はぁはぁ…理樹。ファ○チキ買ってきたぞ？ あとこの服着てみないか？」
「…」
それは
見事なまでに複製された園児服だった。
「ドナ○ド～マジック！」
葉留佳さん、ナイスだけどそこ、金的…
「ぐはっ！？」
「馬鹿兄貴め、ここまで真性のろりだとは…らんらんるー」
「らんらんるー」
「「「「らんらんるー！」」」」
うわ!?
不用意に発した言葉が伝染した!!?
いや、洗脳された!!?
そして、よりカオスになっていく僕の部屋。
今はなんだか、この喧騒が心地よかった。
後日。
僕の風邪が治ると同時に葉留佳さんに超風邪菌が感染し、謎の仮面紳士マスク・ザ・斎藤の手によりバイオ田中が物理的に葬り去られた。
そして、リトルバスターズ内で感染したマクドナルドブーム(ドナルドブーム？)は約４日間続いたと、ここに記しておこう。
あとがき。
今回は理樹が風邪を引く、いや、引かされる？お話でした。
「理樹いじめるな」
「はるちんカワユス」
「うまうー」
などの感想をお待ちしております。
なんでもいいです。
さぁ、感想を！(半強制)
Web拍手よりお待ちしております。
また、裏リトバスのほうは、ゲームテキストが見つかり次第始めようと思ってますので！
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