1/1ページ目 『真人くんのばかぁぁああ!!!』 寮内に響き渡る叫び声。 それは休日の朝6時、幸せそうに安眠を貪っていた生徒達全員をを叩き起こすには充分な音量であった。 「なんだ!?真人がどうした!?……え?」 「…三枝、うるさいぞ?………んぁ?」 発生源はリトルバスターズ次期リーダーであり、最近は、バスターズ唯一の常人であるという周りの意見を完膚なきまでに破壊して隙あらばイチャイチャとバカップルぶりを見せつけるようになった――直枝理樹の部屋だ。 説明が意味不明な上に話が掴めない、という意見は受け付けない。 因みに、理樹と葉留佳が手を組んで悪戯を仕掛けてくるときは、99,9捕獲することが出来ないと彼女の姉で風紀委員長でもあるシスコン…げふんげふん! 二木佳奈多が嘆いている。 あの大人しくて、なぜこの集団に?と囁かれていた理樹の変わり様に、彼らを良く知る人物達は驚き、そして納得した。 あぁ、やはりコイツもリトルバスターズか…と。 おっと、話が逸れたようだ。 兎に角、朝早くに理樹の室内からあがった叫び声に反応し、駆けつけた恭介と謙吾の2人の目に飛び込んできた光景。 部屋の主、直枝理樹は何故か部屋に不在。 理樹のベッドの上でぐずっている葉留佳と上半身裸の真人。 彼は息を荒くしていて―― 「「……………」」 「うわっ!お前ら待て!オレは筋トr…」 ズゴォォオオっ! 色々と誤解を招く状況に、息のあった2人の攻撃。 「ぐふぅうぅう!?」 真人はすっ飛んでいって壁に激突。 そのまま壁を破壊して瓦礫の下敷きになり…そのまま動かなくなった。 「真人!お前は…なんてことを…!」 「理樹が居ないからって三枝を襲うとは…見損なったぜ!…と三枝、大丈夫か?」 巷では(21)紳士であることで有名な棗恭介氏が葉留佳を心配そうな顔で覗き込んだ。 「グスッ…理樹くんが…理樹くんがぁ…」 「…は?」 訳がわからない。 何故にそこで真人ではなく、理樹の名前が出てくるのか? 剣道さん改め、ロマンティック大統領〜オバマなんかに負けないぜ!目指せ支持率100%〜なクールGUI、宮沢謙吾はおおいに困惑した。 「うぅ…なんで…なんで理樹くん止めてくれなかったんだよ!真人くんのばかぁぁああ!筋肉ぅぅうう!一生童貞!うわぁぁぁあああ!」 何気に酷い。 『理樹くんが失踪しました』 前日 夜の2時過ぎだったか。 正確な時間は良くわからないが、ゴソゴソと何かが部屋の中を動き回る音に井ノ原真人は目を覚ました。 「…なんだ、理樹か」 理樹と呼ばれた人影は真人の方へ向き直る。 「ごめん真人、起こしちゃったね」 「いや、気にするな。…んで何やってんだ?」 こんな夜中に、と不審に思った真人は理樹に問い掛ける。 「…ちょっとね」 見ると、理樹の鞄には大量の服と非常食が詰め込まれていた。 先程のゴソゴソという音はそれを詰める音だったのだろう。 「どっかに出掛けるのか?」 真人が寝惚けた顔でそう問い掛けると、「ちょっとね」と理樹は微笑んだ。 やがて、理樹は荷造りを終えて鞄を肩に掛ける。 そして真人に「これ…葉留佳に渡しておいて」と一通の封筒を渡してドアへ向かっていく。 「早く帰ってこいよ」 「…うん」 ガチャリと扉を開き 「じゃあ、行ってくるから」 「ぐぅ…」 「寝るの早!?あとそこは床だよ真人…」 バタン。 最後にツッコミを入れて理樹は出ていった。 そして今に至る。 「ふむ…家出か…?」 「えっ!?理樹くん家出!?どどどどどうしよう〜」 「なにぃ!?理樹が家出した!?あたしはどうしたらいいんだ!?というか家出ってなんだ?」 「直枝が…出ていった…?あ、あり得ないわ…」 いつの間にか集まって来ていた他のメンバーも動揺を隠しきれない。 「恭介さんと駆け落ちなら…」 「わふっ!?リキはホモだったですかー!?変態さんでしたか!?あぶのーまるでしたかー!?」 一部不穏な言葉もちらほら。 理樹というツッコミを失ったリトルバスターズは壊滅的なまでに暴走し、しかしそれに新たなるツッコミ要員、二木佳奈多が立ち上がった」 「美鳥さん、地の文に工作しつつおかしな流れに持っていこうとしないで」 「ちっ!」 「舌打ち!?」 「で、その井ノ原さんに渡されたというレターは何処にあるのですか?」 「あぁ、これだ能美。あとお前、一歩間違えたらル●大柴だからな?」 恭介が取り出したその封筒を「私が読む!」と葉留佳が取り上げた。 ビリビリと品の無い音をたてて封を破るあたり、流石はるちんクオリティーといったところか。 「えっと、葉留佳へ。1週間後には絶対帰ってくるから、それまで待ってて。本当にごめんね…追伸:くれぐれも佳奈多さんやみんなに迷惑掛けちゃ駄目だよ。…………………1週間…?いっしゅうかん…?いっしゅ…か…………………………………」 プシュー… そんな音をたててを葉留佳が止まった。 思考停止 機能停止 三枝葉留佳に致命的な損傷を発見しました。 直ちに意識を終了します。 …………バタッ! 「Σ(∵)」 「ほわぁ!?はるちゃん!?」 「いかん、葉留佳君が…取り敢えずベッドに…はぁはぁ」 危ない表情の来ヶ谷が葉留佳をベッドに運んでいった。 その後、意識を失った葉留佳をベッドに寝かしたのちもう一度封筒を確認する。 手紙は数枚入っており、『佳奈多さんへ』と書かれた手紙と、『恭介へ』と書かれた手紙の2つ。それから、『真人へ』と書かれた手紙。ちなみに、真人宛の手紙には文字が1つもなく、目の中に人差し指を突き上げる形で構成される暗号のようなものが書かれていた。良く目を凝らすと、隅の方に小さく「筋肉」と書かれてそののちに消された形跡のある唯一の言葉が見つかった。 「これは…例の宗教のマークか!?」 訳がわからなかった。 「…って、これは来ヶ谷の字じゃねぇか!」 「あぁ、よくわかったな、君宛に私が後から入れておいた」 いつの間に、そして何の為に しかし、生憎ツッコミを入れる存在がいない為にその話題はそこで断ち消えた。 「恭介氏、手紙の確認を」 「あ、あぁ…恭介へ。絶対捜さないでね?…………………………俺はそんなに信用なかったのか…」 「まぁ、馬鹿兄貴は率先してそういうことするからな」 「同感だ。そういえば、昔もなにかなかったか?」 「うーみゅ…もしかしたらアレの事か?」 「ふぇ?鈴ちゃん、アレって?理樹くん前にも家出したの?」 「あぁっ!オレも思い出した!ありゃ中学1年の夏だ!」 「そうか、そういえばそんなことあったな…」 騒ぎ出す旧リトルバスターズメンバーに新リトルバスターズのメンバーはついていけず、遂に来ヶ谷が「焦らすなブッ飛ばすぞ!」とキレるに至った。 「あぁ…えっと、それはだな」 『全国コンビニ巡り一人旅』 「…………は?」 「なんですのそれは?」 「なんかかっこいいよ〜」 「いや、こまりちゃん、まったくかっこいいよ〜の意味がわからんが?」 「それ以前に、この話の意味がわかりません」 「私も同感。説明してよね、恭介さん」 「えっとだな、それはその名の通り、全国のコンビニを巡って旅をする、というものだ。……って、なんだその目は!この件に関しては俺は無関係、寧ろ被害者だ!」 突然居なくなって、学校に話を通すのに俺がどれだけ苦労したか ぶつぶつと恭介がぼやく。 「あのときは全部理樹が悪い。きょーすけは悪くない。あのときの理樹はきしょかった」 うーみゅと鈴が唸る。 「だって、ファミマやローソン、ミニストップが僕を待っている!とかスッゴい笑顔でオレと謙語っちに言ってきたんだぜ?」 真人が捲し立てる。 「しかも、それから1ヶ月、地方各地のファミマ、ローソン、セブンイレブン、ミニストップ、サークルKなどのコンビニでサムズアップした顔で笑う理樹の姿が目撃されていた」 辛そうな謙語の言葉に一同絶句。 想像ができない。 「…そういえば、理樹くんの幼稚園の卒文にもコンビニが出てきたような…」 「…小学校の時もだ」 「中学の時もだ…オレが筋肉についての話を書こうとしたら、僕はコンビニだねって言っていた」 いや、理樹よ。お前どれだけコンビニ好きだ。 「と、取り敢えず、最後の手紙を読みましょうか……えっと、最後の手紙は私宛よね?」 「佳奈多さんへ。葉留佳をよろしく頼みます。1週間葉留佳のルームメイトを変えておきました。追伸:寮会のバレンタイン企画についてわからないところがあれば連絡ください」 「…………」 ピポパポ…トゥルルル… 無言で携帯を操作。 『もしもし、佳奈多さん?なにかわからないことでもあった?』 「既に、貴方の行動の全てがわからないわ!!一時間以内に帰って来なければ葉留佳を殺して私も死ぬから!!!」 その時の佳奈多の顔はさながら鬼のようで 葉留佳は意識を失いながらも本能的に布団に潜り込み、小毬、クドリャフカは夢の世界へ。 あやはホルスターから銃を取りだし、鈴は子供にでも還ったのか、「たすけてお兄ちゃん!」と恭介に抱きついて恭介はというと、満面の笑みを浮かべ悦びをあらわにし、「佳奈多ぐっじょぶ!」と鼻血を流しながら呻いていた。 そして 約4分後に真っ青になった理樹が息をきらしながら飛び込んできて半ば振り向き様に佳奈多の放った裏拳を額に喰らって寮全体を揺るがす振動と共に壁をぶち抜いて動かなくなり、更にぶちのめされ、葉留佳に散々泣き付かれた事は言うまでもない。 この、のちにコンビニ事変と呼ばれる理樹の失踪は、数ある黒歴史の中でも最も頻繁に語られるものとなった。 完! なんだこれはw 感想はWeb拍手にてお待ちしております。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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