1/1ページ目 「理樹くん、はやく〜♪」 「ちょっと待ってよ葉留佳さん!」 「いやいや、理樹くんや・・・クリスマスは1年に一度のお祭りですヨ?ほら〜みんなでお神輿担いで、わっしょいわっしょい!筋肉わっしょいって!」 いやいやいやいや。 間違ってもクリスマスはそんな祭りじゃない。 あと、今日はイブだよ葉留佳さん・・・ 「なにぃ!?今日は筋肉祭りなのか!?わりぃ理樹、ちょっくら外に出てくるぜ!」 筋肉という言葉に反応したのだろうか、真人がベットから飛び起き「留守番頼むぜ!」と言いながら、寝巻きのままで真っ暗な外に飛び出していく ・・・・・・たぶん、夜まで帰って来ないだろう。 「今日は1日居ないって言ったのに・・・」 真人は前に部屋のスペアキーを壊していて、現在は僕が1つ管理している物しかない。 「ほらほら理樹くん!早く行こ行こ♪」 いつもならば、気まぐれに飛び出していった真人が帰ってくるのを待っているのだが、今日はそうもいかない。 何故ならば、さっきも言ったが、今日はクリスマスイブだからだ。 クリスマスの日はリトルバスターズ全員でパーティーを開くので、イブに葉留佳さんとデートに行く予定を入れている。 先程から葉留佳さんが「早くはやく〜」と急かすのはその為だ。 ―…しかし、現在時計の針は朝の4時を指していた。 先程も言ったように、外はまだ暗い。 「いくらなんでも、ちょっと早くない?」 目覚ましが鳴るよりも早くに興奮気味の葉留佳さんに「理樹くん理樹くん!」と揺すり起こされたのは、3時半。 ・・・おそらく、昨日は寝ていないのだろう。 夜中、サンタクロースを捕まえようとして寝たフリをしている葉留佳さんの姿を安易に想像することができる。 ・・・因みに、サンタクロースが来るのは明日だ。 今日はイブだよ葉留佳さん・・・ 「・・・早起きは酸物の毒デスヨ?」 「すっごく嫌だよそんな毒!」 正しくは、早起きは三文の得だ。 「というわけで、レツゴ♪」 「まったく、葉留佳さんは・・・」 『はるちんクオリチー』なる脈絡の無さにいちいち突っ込んでいたらすっかり目が覚めてしまった。 ―…それに、何だかんだ言って早く行きたいのは僕も同じだ。 ―…恋人と過ごす初めてのクリスマスイブなのだから。 『僕たちのクリスマスイブ』 それから30分ほど経って、僕は葉留佳さんと並んで薄暗い外を歩いていた。 出発直前になって、葉留佳さんが「お化粧忘れたー」とか言い出したが故に遅れた結果だ。 吐く息が白く、暗闇にくっきりと映る。 西園さん曰く、「今年は暖冬です」らしいのだが、やはり寒いことにはかわりない。 ジャンパー(否リトルバスターズジャンパー)とマフラー、あとニット帽をフル装備しないと凍えて死んでしまいそうだ。 手袋は、現在葉留佳さんと手を繋いでいるが故にお互い片手のみ装備されている。 「いや〜、やっぱりちょっと寒いですネ」 「・・・まだお日様も出てないからね?」 少しだけ批難を込めた眼差しで葉留佳さんを見つめる。 「うぅ・・・それだと、はるちんが悪いみたいじゃないですか・・・」 「いや、その通りなんだけど」 「・・・・・・」 「どうしたの?」 急に静かになった葉留佳さんに不信感を覚え、その顔を覗き込むと 「えいっ♪」 「うわぁ!?いきなり抱きつかないでよ!?」 とびっきりの笑顔を満面に浮かべた葉留佳さんに勢いよく抱きつかれた。 「でも、これなら寒くないよね?」 「まぁね…」 「理樹くんの匂いがする〜」と頭を僕の胸に擦り付けて甘える葉留佳さんが愛しくなって、その頭を優しく撫でる。 「葉留佳さんは、かわいいなぁ」 フワリと、仄かにオレンジの良い香りが僕を包み込んだ。 「ほんと?かわいい?」 「ホントだよ」 どんな恥ずかしい事でもあっさりと口にできてしまう。 それだけ僕は葉留佳さんのことが好きなんだろうと思う。 「えへへ〜」 いつもの悪戯好きな葉留佳さんも、甘えん坊な葉留佳さんも、全部愛しかった。 「キス、しよっか?」 「…うん♪」 いつかの、不安を逃避するものとは違う、ただ愛を深める為のキス。 触れ合う唇の柔らかさが、大きな安心を与えてくれる。 僕はいつかの世界よりずっと強くなった。 葉留佳さんも、不安を乗り越えて、ずっと、ずっと強くなった。 「…葉留佳、愛してるからね」 いつの間にか、そんなことを口走っていた。 「愛してる」 もう一度繰り返してその身体を抱き締める。 この先もずっと、守っていくと決めた大切な人を。 「理樹くん…今、名前…」 「僕は葉留佳をずっと、愛してるから、どんな事があっても…愛し続けるから」 たとえ、『終わらせたい』と彼女が望んだって、絶対に離してなんかやらない。 たとえ―この先に、どんなに過酷な現実が待っていようとも… どんな辛いことがあったとしても… 『この愛は、永遠に続いていく。』 そう信じることができる。 全部2人で乗り越えて行けるように。 どんな事があってもその手を離さないように。 『さん』付けも、いい加減に卒業しよう。 「だから、これからも…ずっと僕の隣に居て欲しいな」 返事はなかった。 ただ、もう一度重なる唇が全てを肯定している。 たとえ、どれだけまわりが寒くても、僕たちだけはずっと熱いままでいられるように。 「…メリークリスマス、葉留佳」 「メリークリスマス、理樹くん」 寒空の下 僕らは抱擁を交わすのだった。 ―…今日が最高の1日になりますように。 そう、何処かで覗いているだろう出歯亀サンタクロースに願をかけた。 『筋肉わっしょい!筋肉わっしょい!筋肉サイコー!いぇいいぇ〜い!筋肉サンタやっほ〜!マーン!!』 「宮沢さん、待ってください!!」 抱き合う僕たちのすぐ近くを、真人を筆頭にしたむさ苦しい法被姿(一名剣道着にジャンパー)のマッチョ達+αがお神輿担いで通り過ぎていった。 「よぅし、見なかった事にしよう。…オッケー?」 「いやいや、アレは強烈デスヨ?」 確かに無理だ。 非現実をも現実に変えてしまうとは・・・『筋肉旋風』恐るべし。 ―…僕はサンタクロースを恨んだ。 「いやぁ…みゆきちんも可哀想デスネ…」 「…巻き込まれないうちに、帰ろうか?」 この分だと、町全体が筋肉に包まれ、住民は『筋肉〜』とか『筋肉革命だぁあぁあ!』とか、『マーン!』だとか『………かゆ………………………うま……………』しか言わない筋肉ゾンビと化すだろう。 「アイアイサー!」 見ている分には楽しいだろうが、参加はしたくない。 ・・・おそらく抵抗などする隙もなく洗脳されるのがオチだろう。 「今日は、1日部屋でまったりしよう」 「うん」 いつもなら渋るはずの葉留佳が全く抵抗しないのだから、筋肉は恐ろしい。 寮への帰り道 「理樹くん、あれ」 葉留佳の指を差す方向には、死地(街)に向かう恭介と佳奈多さんの姿。 「「アーメン」」 2人して十字を切った。 「お〜う!これはキリストっぽいデスネ!」 「そう言えば、今日はキリストの誕生日だったよね?」 徐々にすれ違う人の多くなる寮への道を、僕たちは手を繋いで戻っていった。 あとがき この話、実はじゅーはち禁にしようかと思っています。 じゅーはち禁希望の方は、Web拍手にて、『例のアレ希望』と書き込んでくださいませ♪ 100拍手回ったら、執筆しますので。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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