1/7ﾍﾟｰｼﾞ目
外史管理統括サーバーシステム“南海老仙”
その機能、読んで字の如く。
点在する外史の全てを管理する存在であるそのシステムのモニター画面に、赤々と表示されたエラーの文字が映し出されるのを見て、管理者は驚きを隠せなかった。
左慈「南海老仙がエラー……。北郷一刀を突端として開かれたとある外史が、突然変異を起こした事が原因だと？」
于吉「そうです。正確な落下地点は分かりませんが、推測では交州の高涼県。そして、驚くべき事は、その外史の中で我々管理者側に詳細データのない人物のプログラムを多数確認したということです」
左慈「高涼……！？ 馬鹿な！ そんな事はありえない！ あの外史は、他ならぬ北郷一刀自身の手によって厳重封印された筈だ！」
雪菜「しかし、実際にありえている、何らかの問題が発生しているからこそエラーが表示されている訳です。それくらいは理解してください。余談ですが、その外史内にて、現管理者総裁であり唯一無二のオリジナルデータ“徐晃”の新規データも確認されています」
激昂する左慈に、少女は氷柱のように冷たい言葉を投げ掛けた。
左慈「新規データ……？ 何故だ！ おい、雪菜！ 撫子に……妹に何があった！！」
雪菜「実の妹を上司に持つ貴方は、いつも、どのような気持ちで仕事をしているのでしょうか。とまぁ、脈絡のない冗談はここまでとして……バグの原因は不明です。また、徐晃総裁との連絡回線についても通常と同じように通じますので、管理者死亡による新規データの作成という訳ではないようです。これで少しは安心しましたか、妹嗜好家の左慈？ それと、その名を口にする事が許されるのはこの世に唯一人。今回は特別に見逃しますが、次は無いと思ってください」
左慈「……」
雪菜「好きなだけ喚き散らして、今度は沈黙ですか？」
于吉「……」
雪菜「于吉も、言いたいことがあるのでしたら、はっきり仰ってください。正直鬱陶しいです」
于吉「いえ、別に。私的には、こういうシチュエーションも充分アリかと」
雪菜「……変態ですね。貴方の近くに居ると精神が穢れそうなので、10数えるうちに半径二メートル以上私から距離をとってください」
于吉「これは手厳しい。……しかし、ユキも随分と苛立っているようですね。普段あまり感情を表に出さない貴女が、こうも攻撃的になるとは」
冷たく、吐き捨てるように指摘する雪菜。
対称的に、楽しげな様子で言われた通り距離をとる于吉。
どこかで見たことのあるような構図だった。
雪菜「私は、別に苛立ってなどいません。それで、話を戻しますが、見ての通りです。モニターに表示されているのが現段階で確認された新規データになります」
于吉「霧島零、凌統の事ですか……」
雪菜「そうです。現段階ではまだ分かりませんが、霧島零の危険レベルはＳ。凌統に至ってはＳＳ以上の数値を記録しています。分かり易く説明すると、“僕の考えた最強生物”がその辺をうろうろしているという表現が最も正しいかと」
于吉「ふむ。最も忌むべき、封印された筈の外史の再構築。そして、危険レベルがＳ以上の未確認プログラム。オリジナルである“白銀の悲女”の新規データ……。不確定要素の多い外史というのは、得てしてそのプロットに何かしらの変調を起こす可能性があります。原因の究明や、均衡レベルの測定など……いずれにせよ、早い段階でこの外史の調査を行う必要があるようですね」
雪菜「……」
結論を出し、どこか促すような口調で紡がれる于吉の言葉。
雪菜は、何も言わず彼に背を向けて“南海老仙”出口へと歩き出した。
于吉「……何処に行くのですか？」
雪菜「幾年か振りに、あの人に逢いに行ってきます。調査結果についても漏れ無く報告しますので、くれぐれも余計な干渉はしないで下さいね？ 来たらバラします」
最後、脅すように念を押して“南海老仙”を後にする雪菜。
そんな彼女を見送る于吉の顔には、まるで娘の成長を見守る父親のような笑みが浮かんでいた。
于吉「あの娘も……随分と変わったものですね。これも全て、彼のお陰なのでしょう」
そう呟いた于吉の笑みが、若干寂しさを帯びたものに変わった。
「だと言うのに。……貴方は今、何処で何をしているのでしょうね……北郷一刀」
next
↓
[指定ﾍﾟｰｼﾞを開く]
＜＜重要なお知らせ＞＞
@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
友達に教える
[編集]
無料ﾎｰﾑﾍﾟｰｼﾞ作成は@peps!